風立ちぬでこの人は・・と思う人物がの1人に「カプローニ」さんがいます。しかもネット上では「カプローニは悪魔である」という考察も見られます。
悪魔!?かなり驚きの設定です。どちらかというと、二郎を励ましているのでは?と受け止められるカプローニさん(筆者的に・・)
ラストの二郎とカプローニとのやりとりも何か含みがあるようなのです。ということで今回は二郎の夢の中に出てくる「カプローニ」さんについて考察・掘り下げていきたいと思います。
カプローニの設定は悪魔なのか?
不思議な存在であるカプローニさん。どのような方なのか設定をさっくりご紹介。
- イタリアの航空技術者・航空機設計者
- 二郎と同じ航空機設計者であり同じ志を持っている
- 二郎と同じ何度も挫折を乗り越えて夢向かう
二郎の夢なのかでカプローニの役割とは・・
カプローニは二郎にたびたび名言を残しましたよね。そしてその都度、二郎は影響を受け何かを感じ、成長しているように感じました。二郎にとってカプローニとは自分を良くも悪くも成長させれくれる存在なのだと思います。
では二郎が成長・影響を受けたであろう名言を見ていきましょう。
「飛行機は美しい夢だ。設計家は形に夢を与えるのだ」
二郎が近眼のためパイロットの夢を諦めた時、次の夢「美しい飛行機を作る」を与えてくれたのがこのシーンなのではないでしょうか?「君は美しい飛行機を設計すれば良いのだ」と言ったカプローニさん。二郎が夢を持てたのは素晴らしいですが、将来二郎が作った美しい飛行機が戦争から帰らないことを知っている身としてはどうにも切なくなりますね。
この時、二郎とカプローニさんは同じ航空機設計者として「美しい飛行機を作る」という同志になったのでしょう。
「まだ風は吹いているか?日本の少年よ」
二郎が青年となり、大学へ通っている頃に関東大震災が起こります。そして火事の中から本を守ろと必死になっているときに、ふと二郎の意識に現れたカプローニさんが言ったセリフです。このセリフは以下のように続きます。
二郎「はい、大風が吹いています。」
カプローニ「では生きねばならんLe vent se lève, il faut tenter de vivre(風が立つ。生きようと試みなければならない)」
二郎は自分を奮い立たせる場面でカプローニが出てきますね。大地震に火事。その後を考えると恐怖で足がすくむ感じになるのでは。。と筆者は想像してしまいます。そんなとき、前向きな言葉が浮かぶ二郎はとても真の強い人だと思います。そしてそのうように強く入られたのには、少なからすカプローニ(と美しい飛行機を作りたい夢)があったのではないでしょうか?カプローニの存在の大切さをこの場面から感じるように思います。
「設計で大切なのはセンスだ。センスは時代を先駆ける。技術はその後ついてくるんだ」
二郎がドイツの飛行場を見学し、日本との圧倒的な差(技術・資本力)を感じた時の夢に出てきたカプローニさんのセリフです。
深いですよね。センスを磨き、自分を信じ、自分を磨く。そうすれば技術は自ずとついてくるということでしょうか・・
「君はピラミッドのある世界と、ピラミッドのない世界と、どちらが好きかね?」
カプローニ「空を飛びたいという人類の夢は、呪われた夢でもある。飛行機は破壊と殺戮の道具になる宿命を背負っているのだ。それでも私はピラミッドのある世界を選んだ。君はどちらを選ぶかね?」
二郎「僕は美しい飛行機を作りたいと思っています」
ピラミッドの意味は色々と考察できるかと思います。
古代エジ王都でピラミッドを作る際にたくさんの犠牲者が出たことは有名ですよね。なくても良いものでしたが、現在でも美しい建造物です。たくさんの犠牲者の上に成り立っているピラミッド。
もう一つはピラミッド型社会を表していると考察できます。二郎はお腹を空かせた子供にシベリア(甘いお菓子)をあげようとしましたね。この子達は貧しく、当時の日本では少なくない数の人たちが同じような状況だったと思います。(ピラミッド底辺)
二郎はピラミッドの頂点におり、高価な部品を使って飛行機を設計、開発している。
→多くの犠牲を払って飛行機を開発している。
二郎が叶えたい夢というのは、当時たくさんの犠牲の上にあったものなのでしょう。それをカプローニは言いたかった。そして、二郎にもそのことは伝わった。それを分かった上でも二郎は「美しい飛行機を作りたい」と言ったのでしょう。自分が何を作っているのか、そしてそれで何が起こっているのか知っている。それでも夢を諦めることはできない・・
シベリアを子供達にあげるような心優しい二郎。たくさんの人を犠牲にしても夢を叶えたいという二郎。二郎の苦しい矛盾がわかるような気がしますね。
「創造的人生の持ち時間は10年だ。君の10年を力を尽くしていきなさい」
カプローニが二郎の夢の中で引退を告げます。そして、上記のセリフ。二郎はカプローニが言ったように自分の持てる全ての力で航空機の設計をしていきます。
二郎の節目、節目でカプローのが現れ、二郎に決断させていたのかな〜と感じます。確かにカプローニは二郎にって恩人なのでしょう。しかし、それだけではないのかな。。とも感じますよね。二郎も潜在意識の中でそうしたい!という思いがあったからカプローニが現れ、「美しい飛行機を作る」ということも何よりも重視してきた。たくさんの犠牲を払いつつ・・
二郎を見ていると夢を持つ人の強さを感じますね。
カプローニの設定はメフィストフェレス(悪魔)?
なぜ、カプローニが悪魔・メフィストフェレスと言われるのか?そこには宮崎駿監督のこんなセリフが大きく関わっているのではないでしょうか?
カプローニの声をあてた野村萬斎さんは、当初、彼は「二郎に対して一種の啓示をしていくかなりセイントな感じの人物」だと思っていたそう。
宮崎監督から「カプローニは二郎にとってのメフィストフェレスだ」
カプローニの声を担当した野村萬斎さんに宮崎監督が出した指示がメフィストフェレスだったのです。
メフィストレスとはどこからきているのか?
- 16世紀のドイツのファウスト伝説やその伝説を題材にした文学作品に登場する悪魔が「メフィストレス」。
- ゲーテの「ファウスト」が特に有名
簡単に内容をまとめてみました。
- ファウスト伝説のメフィストレスは、主人公・ファウストの望み(己の欲望)を叶える代わりに魂をもらう契約をする。
- メフィストレスは契約に忠実(欲望を叶える)ことに忠実である一方、言葉巧みにファウストを操作しようとする。
- 作品によって、ファウストの魂は取られたり(契約成立)、純真な恋によって魂の救済を得たり(契約不成立)だったりと色々だそうです。
有名なゲーテの作品では、メフィストレスは「誘惑の悪魔」という設定だそう。
二郎にとってカプローニはメフィストレス・誘惑の悪魔だったのか?
宮崎駿監督の絵コンテにはこのよな書き込みがあったそうです。
「カプローニ」の狂気を宿すドアップ。確かに・・笑顔寄りではありますが、どこか狂気じみた感じもしますよね。
二郎にとってのカプローニの存在、名言の章。
カプローニは確かに二郎を応援する存在であり、同じ夢をおう同志でした。
しかし夢を持つきっかけを作ったのはカプローニは「君は美しい飛行機を設計すればいいのだ」と二郎に言います。そして、二郎は設計士の道を進むことに。
そして、ピラミッドのセリフの時も。。多くの犠牲よりも自分の夢を選ぶというはっきりとした選択を二郎に導いたようにも受け取れますね。
二郎にとって、カプローニは悪・悪魔ではんない。しかし、「誘惑の悪魔」出会った可能性は高いように思います。
このような理由からカプローニは悪魔とネット上でも多く囁かれ、考察されているのでしょう。
二郎とカプローニのラストシーンを考察
二郎が滅ぼした国とは?
風立ちぬのラスト、美しい飛行機を作るという夢を追いかけてボロボロになった二郎とカプローニの印象的なシーンがあります。
カプローニ「君の10年はどうだったかね?力を尽くしたかね?」
二郎「はい。終わりはズタズタでしたが」
カプローニ「国を滅ぼしたんだからな。あれだね、君のゼロは」
カプローニが言った10年とは、前の2人の会話にあった「創造的人生の持ち時間は10年だ。君の10年を力を尽くしていきなさい」とのことでしょう。
激動とも言える10年。力を尽くしたということで、二郎は「はい」と答えたのでしょう。愛する人を失いボロボロになった二郎。力を出し尽くし、零戦を作り精神的にも体力的にもボロボロになったであろう二郎。
カプローニの「国を滅ぼした」は果たしてねぎらいの言葉なのでしょうか・・事実を言っただけなのかもしれませんがどこか残酷な響きにも聞こえます。
二郎が滅ぼした国とは日本とも考察できるし、2人の夢の王国(美しい飛行機を作る夢)のこととも考察できるのではないでしょうか・・
何かを滅ぼすということは自分も無傷では終わらない。相当の代償を払う結果となるのではないでしょうか?
二郎とカプローニがいる草原の意味とは?
二郎「ここは私たちが最初にお会いした草原ですね」
カプローニ「我々の夢の王国だ」
二郎「地獄かと思いました」
カプローニ「ちょっと違うが同じようなものかな…」
夢の中で二郎とカプローニは二郎が設計した零戦の残骸の中を進みます。それは帰ってこなかった零戦たち。二郎がたくさんの犠牲を承知で、美しい飛行機を作ることを選んで設計した零戦たち。なんとも残酷なシーンです。
二郎が「地獄かと思った」と言い、カプローニは「ちょっと違うけげ同じようなもの」と言っています。つまり、2人が出会った草原は当初、2人の夢の王国であり、ラストは地獄へと変わってしまった。草原は夢の世界であり、また死後の世界でもあるのではないでしょうか?
菜穂子が消え、カプローニと二郎が残る。意味を考察!
二郎の夢の中で菜穂子も現れます。そして「あなた、生きて」というセリフがあります。とても印象的ですよね。
※菜穂子の「生きて」についてはこちらの記事に詳しく書いています!
二郎はそのセリフに対して「ありがとう」と答えます。10年力を尽くして設計した零戦が一騎も帰ってこなかった、愛する人(菜穂子)が死んでしまった。
そんな状況で愛する人からの「あなた、生きて」。夢に出てきた菜穂子はそう言い残し空へ消えていきます。消えていく菜穂子をカプローニと見る二郎。
実は当初、菜穂子のセリフは「あなた、きて」と菜穂子とともに死の世界へと誘うものだったそうです。しかし、一文字たされて「生きて」になった。二郎にとってはどちらが良かったのか。。カプローニ(メフィストレス)に導かれるままに自分の欲を貫いた二郎は菜穂子と共にいくことはやはりできなかった。カプローニが言ったように「君は生きねばならん」を取らざる終えなかったのではないでしょうか。
二郎は美しい飛行機を作ることで犠牲にしてきた者たちへの「死んでお詫びする」という選択肢がなくなり、生きて償っていくしかなくなった。そして二郎は力の限り生きたのでしょう。まさに「生きねば」の精神、気持ちだったのではないでしょうか?
カプローニのモデル・ジョヴァンニ・バッチスタ・カプロニとは?
カプローニのモデルとなったのはジャンニ・カプローニ(ジョヴァンニ・バッチスタ・カプロニ)氏。
- イタリアの航空機メーカーカプロニの創業
- イタリアの航空技術者・航空設計者
- 土木技術者・電気技術者
多彩な方でありやり手の実業家でもあったようです。
第一次世界大戦では爆撃機や輸送機の生産で飛躍し、1930年頃には自動車・船舶用エンジンなど。事業の多角化に成功しました。大手複業企業となり、企業名もソチェタ・イタリアーナ・カプロニとなっていきました。
「風立ちぬ」のカプローニも自分に自信があり、服装も素敵でしたよね。事業に成功し、自分を持っている方でした。
1950年にソチェタ・イタリアーナ・カプロニは消滅し、子会社が1983年まで残ったそうです。
ジャンニ・カプローニ氏は1957年にローマにて死去しました。
実際に、堀越二郎とカプローニ氏が出会ったことはなかったとのこと。2人をで合わせたのは、宮崎駿監督でした。詳しくは次の章でみていきます。
宮崎駿監督とカプローニの深い関係!?
スタジオジブリの名前はカプローニ社がの設計・製作した飛行機から来ているのは有名な話です。
宮崎駿監督が飛行艇好きというのも有名な話ですよね。だからこそ生まれたのが「紅の豚」です。公開当時、筆者にはまだその魅力がわからない子供でした。しかし今では大好きな作品。。やはりどこか大人な雰囲気があるジブリ作品ですよね。
この紅の豚を見たジャンニ・カプローニの曾孫にあたる人物が「もし要るならこれあげる」と1936年のカプローニ社の社史を宮崎駿監督に送ってくれたそうです。
凄い!の一言ですよね。ジブリの名前の由来となった会社の方からの贈り物・・・さすが宮崎駿監督と思うと共に、行動にうつすのはやはり大切なことなのだなと実感じます。
※詳しくは愛国談義という書籍に書かれています!
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紅の豚がなければ、「風立ちぬ」でのカプローニさんは少し違った存在になっていたのかもしれませんね。
また実際のカプローニさんは映画のカプローニさんと違い。意地っ張りな方であり、見栄っ張りのところもあったそうです。宮崎駿監督はスマートな人物よりもどこか人間味のある面白い人物を好むように感じます。だからこそ、「風立ちぬ」メフィストレスとしてカプローニさんが登場したのかもしれませんね・・!
まとめ
カプローニという人物について掘り下げ・考察しきました。宮崎駿監督にとって思い入れがある作品なのだなと改めて感じました。
カプローニさんのセリフ、表情に注目して再度「風立ちぬ」を見たくなりますね!
ここまでお読みいただきありがとうございました。